『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』(2019 日本 アニメ)の映画感想文。

本作を観た後、スクリーンから出て歩いていると、一緒に観ていた50代くらいの女性が娘さんと思われる女性に「なんか、前(作)の方が良かったな」と何度もおっしゃっていました。

その女性の言わんとしていることが、どういうことなのかは知る由もありません。

ただ、ぼくも観方によっては本作は主軸となるテーマがブレてしまう可能性があるので、前作の方が時間的にも内容的にもシンプルで良かったかもと思いました。

 

ぼくは、本作を、前作『この世界の片隅に』を楽しんだ人のためのボーナストラックのようなものだという感覚でとらえていたので、大満足の作品でした。

オープニングからすでに涙ぐんでいるという状態でした。

 

改めて、本作で思ったことは、すずの声を担当しているのんさんが素晴らしいなということです。

彼女自身、芸能活動において長い間不遇の期間を過ごしました。

本来は役者のバッググラウンドを作品に反映させないで観たいところなのですが、どうしてものんさんとすずを重ね合わせてしまって、それがまた深い味わいを醸し出していました。

 

本作では、”男と女”、”夫婦”などのテーマが加えられています。

この辺りが前作からの主題となるテーマをブレさせてしまう可能性のあるところだと思っています。

ぼくは、このお話を観ることができて良かったなと思っています。

かなり、心にくるものがあって、観ていると辛くなる場面なのですが、自分の中で”臭いモノにはふたをする”ということをせずに、裏も表も直視して、考えることができる機会をもらえました。

 

物語のクライマックス。

自分の居場所を探し求め続けてきたすずは、あと少しのところで自分の右手とともに失ってしまいました。

苦しみ、悲しみ、ただ漂うように生きる日々。

それを周作や家族と一緒に乗り越えたとき、すずの失った右手にすがるようにしがみつく女の子がいました。

居場所がなくて、居場所を探し続けて、ようやく見つけることができたとき、今度は自分自身が誰かの居場所になっていた。

そんなふうに、ぼくは、ぼくたちは命をつなぎ続けて来たんだな、これからも続けていくんだな、そんなふうに思いました。

作品情報

Yahoo!映画

ジャンル:ドラマ/戦争

上映時間:168分

視聴環境:映画館